桝一市村酒造場

カート

  

出会ってしまった通い瓶

ますいちと書いて原点と読む

ある日、とある屋根裏から発掘された酒瓶たち。こういう昔ながらの瓶が似合う酒をつくろうよ、という話が湧き上がり、それってどんなだろうと問答が繰り広げられました。街道の脇で引っ掛けていた酒。ちゃぶ台でお父さんが嗜んでいた酒。昔ながらの新しい酒。とにかく日本酒らしい酒。云々めぐりめぐって1997年、冬。折りしも吟醸酒ブームの真っ只中、いや辛口純米の酒でいこう、と腹をくくったのです。

そしてはじまった酒造り、とはいえまずは米選びからと吟味したのは地元、長野県産の美山錦。心白という米粒中央の白い部分が大きく、まるで北アルプスに積もる雪のようですね、といった所感からその名がついた全国有数のブランド米です。これをウイスキーでいうシングルモルトの要領で掛け米、麹米ともに使用し、手作業でじっくりと醸したら、もろみが熟して辛口の味わいを呈する頃を虎視眈々と狙い、機を逃さずに搾ります。

いっぽう瓶はというと、屋根裏に忍んでいた首の長い乳白瓶を多治見焼きで再現。江戸時代から続く屋号「〼一」と書き入れて、これぞ蔵の代表酒ですといった顔つきに仕上がりました。さてこの二文字、何と読むのかというと本当は素直に「ますいち」と読みたかったのですが商標の壁というのは高かった。ならばいっそ英語にしちゃおうよと飛躍した結果、これが巧妙。「スクウェア・ワン」、つまり「原点」の意を秘めた名になりました。